インドビジネスがよく分かる中島敬二のインドコラム

インドビジネス環境に対する多くの日本人の持つ誤解を正す

1.インドの一般的ビジネス環境

(1) インドは外資規制が厳しい国である?
・1991年の新産業政策実施以来外資規制は緩和していますが、インドでは規制廃止・緩和を段階的に実施してきたため、過去のある時点で見るとその通りです。
 
・しかしながら、現在のインドには、一般の日本企業はほとんど自由に投資ができます。現在のインドは外資に開かれた市場といえます。
 
・たしかに、現在でも外資禁止業種と規制業種はいくつかありますが、日本の一般企業にとっては殆ど関係しない業種であります。(但し、小売業進出は現在のところ規制あり)
 
・禁止業種とは、原子力エネルギー・宝くじ・ギャンブル・農林業のみです。また、産業ライセンスを必要とする業種は、・葉巻・タバコ・電子航空産業・防衛機器・産業用爆薬・危険化学薬品・蒸留酒・醸造酒です。
 
・出資比率に規制ある業種としては、防衛機器 ・保険 ・出版業(26%以内)、放送・
国内航空(49%以内)、銀行・通信・衛生設備の設置及び運営(74%)があります。
 
・なお、輸入規制品目は政府の代理店のみ許可されている品目:米、小麦、とうもろこし、石油、尿素があります。また機械を除く中古品はライセンスが必要です。
 

(2) 外資に対する会社設立等の許認可取得に相当時間がかかる
・インドの外資に対する法律は税制を含めて大変複雑です。従い、コンサルタントや法律事務所及び会計事務所の協力を得た方が無難です。
 
・つい最近までインド政府との諸手続きには相当な時間がかかったのは事実です。
現在でも一部の手続では他国と比較して時間がかかっているのも事実です。
 
・会社設立手続も最近まで数カ月要するケースもありました。しかしながら、IT大国のインドは会社設立手続等を電子承認が行われておりますので、通常のケースではそんなに時間はかかりません。
 
・私が2009年10月に設立したプラスチック用精密金型製造会社は6日にて許可が下りましたし、昨年12月に設立したコンサルタント会社(Nakajima Consultancy Services LLP)は2009年に新導入されたLLPという新しい会社形態ですが、それでも12日間で設立許可が取得できました。

(3)インドにては外資企業に対する恩典がない。
・インドでは原則外資に対する恩典がないのは事実です。しかしながら、合弁会社はもちろんのこと100%出資であっても、インド企業と扱われますので、インド企業とは互角に競争することができます。インド政府は国際競争力のないインド地場企業は淘汰されてもやむを得ないとの考えですので、外資にとっては恩典といっても良いでしょう。
 
・また、産業振興の必要性を認めた分野や事業形態について優遇措置制度は認められています。たとえば、インフラ関連産業、食品加工業、不動産建設などに対して、法人所得税や関税の免税措置のインセンティブがあります。
 
・さらに、100%輸出志向型企業(100% EOU-Export Oriented Unit)、輸出加工区
( PZ-Export Processing Zone)、自由貿易区 (FTZ-Free Trade Zone)特別経済区 (SEZ-Special Economic Zone)ソフトウエア・テクノロジー・パークなどの事業形態では優遇措置があります。
 
・例えば、100%輸出志向型企業は、輸入関税の無税・5年間の免除(設立後8年以内)・工業区画、工場の割引価格使用・現地購入品に対する中央販売税・物品税が非課税などの優遇措置があります。

(4)インドの税金は高い
・1970年代には個人所得税率がなんと99.3%のときもあり、輸入関税も20年前には100と高率でした。現時点での法人税は30%(サーチャージを入れると、約33%ですが、アジア諸国と比べると若干高めでが、日本よりは安めです。(日本 41%、タイ 30%、中国・台湾・インドネシアは25%)
 
・輸入関税は機械類の基本関税は7.5%(サーチャージを入れると約24%)ですが、この関税は今後も減少する政府方針です。また、2月16日日本とのEPAが調印されましたので今後10年以内に関税は撤廃されることになります。
 
(5)インドのインフラは未整備である
・確かに十分とはいえません。しかしながら、インド政府はインフラ改善を最優先政策として実行中ですので毎年顕著に改善されています。
 

・例えば、2011年度予算では昨年度比23.3%増の2兆1,400億ルピーを支出。この金額は

計画支出の48.5%に当たる。官民共同(PPP)プロジェクトの促進のため、新たな総合政策を

検討する、インド・インフラ金融公社(IIFCL)の融資総額目標は11年度が2,500億ルピーに

設定しています。

・また、インフラ開発を加速させるため、無税政府債を2011年度は300億ルピー分、発行する等の措置も採り、インドのインフラ整備には時間はかかるもの改善し続けている。

・電力については質と量の問題は依然としてありますが、日本等の先進国と比較すれば、かなり劣りますが、一部の地域では少し良好になりつつあります。
 
・道路及び鉄道網も毎年相当な予算を費やし改善中です。通信状態は徐々に良くなってきています。
2.インドにての会社経営
(1)インドにて利益を上げるのは難しい?
・私の入手している情報と私の経験での上ですが、そんなことはないと思います。200年時点では75%以上の日系企業が黒字を達成し、10%以上が損益分岐点寸前でした。
 
・現時点ではインド日系企業の黒字率は55%程度となっているようです。この数字を見て、インドでは利益を上げるのは難しいという方もおられますが、これは正しい見方ではありません。
 
・近年インドに進出した企業数が多く2009年の1年間だけでも90社近くインドに進出しておりまだ創業準備中あるいは営業期間が短い企業が300社ほどあるためです。(2008年1月時点 438社、2010年10月時点 725社)インド日系企業の黒字率はこのため下がりましたが、黒字会社の数は確実に増えてきております。

(2)インドでは日本経営がなかなか通じない?
・インドで日本経営が成功しないというわけではありません。スズキのように日本式経営にて成功している企業はたくさんあります。
 
・私はインドでも日本経営方式を持ち込むべきと考えています。この方式はインドでも有効であることは実証されており、多くのインド企業も日本企業と合弁を行う際、日本式経営導入を歓迎しています。
 
・この方式をインドの状況を鑑みてどのように導入すべきかが課題となります。最初からインドの従来のやり方に合わせてしまうのはお勧めできません。
 
(3) カースト制度がインド経営上問題になる?
・カースト制度が会社経営上問題になることは少ないと思います。私も1人の日本人部下とともに1000人のインド従業員を持つ会社を3年間経営し、現在も自分の会社を経営していますが、会社経営上カースト制度が問題となったことは皆無です。
 
・カーストは職業世襲制度とも言うべき長い間の歴史の中から出来上がった社会システムであり、制度そのものは決して悪いものではなく、悪いのはその職業により差別することです。この差別をすることをマハトマ・ガンジーは否定していたし、インド憲法でもカーストにより差別してはいけないと書かれています。
 
・インドは能力主義の面があり、カースト最下層の人が大統領になったり、インド憲法を作った法学者になったり、州首相になったりしています。また、現在では名前だけではどのようなカーストに属していたかふつうはわかりません。インド人の名前は自分で好きのようにつけられるからです。
 
・地方ではカースト制度は依然として残っているようですが、都会ではカースト制度はかなり影が薄いものとなっています。カースト制度時代に存在しなかった職業が多く出現したためです。顕著な例はIT産業です。またシーク教徒は2%と人口が少ないが多くのビジネスで活躍していますが、シーク教ではカーストそのものを否定しています。
 
・カースト制度は個人の生活面すなわち、個人的付き合いや婚姻などでは影響します。社員同士の心の中ではまだカースト意識はありますが、これを仕事面で前面に出すことは少ないと思いますし、また採用や人事管理の工夫でインドの企業はこの問題に対処しており、結果として深刻な問題とはなっていないのです。
 
3.インドにての生活環境
(1) インドは治安の悪い国である
・テロ事件がインドではときどきあるためインドは治安の悪い国と思われていますが、インドの国は治安の良い国と私は思っています。確かに窃盗やレイプ事件などはインドでもありますが、これはどこの国でもあり得ることです。
 
・夜中でも女性が1人で歩いていますし、通算インドに13年間以上住んでいますが、無謀な旅行者が不用心に無計画な旅行をして被害に遭ったことはありますが、インドに駐在している日本人が殺されたことは一度も聞いたことはありませんし、治安という意味では警察システムを比較的しっかり機能しています。
 
(2) インドは酷暑の国あり、気候条件が極めて厳しい
・確かに気候面ではインドは住みにくい国です。デリーは4月~8月は40度を超える酷暑ですし、チェンナイ、ムンバイ等の気温は30度台ですが湿度が高いため不快指数は高いのも事実です。でも長年インドで生活している私がバンコックなど東南アジアに参りますと、インド以上に気候条件が悪いと実感することも多い。
 
・また、11月~3月(上旬)のデリーの気温は20度台であり、しかも湿度が低くとても快適です。
 
・昔は大変厳しい気候でしたが、今では都市ではエアコンがかなり普及しており、家も事務所も車も温度調節ができますので、それほど苦にならなくなりました。
 
(3)インドの食料状態は日本人にとって過酷である
 
・日本食材調達には殆どの人が苦労していました。日本やバンコックなどに買い出しをしています。
 
・しかしながら、インドの食料状態はかなり改善しています。デリー地域では10件ほどの日本食レストランができていますし、若干割高ですが日本食材店もあります。
最近私が住んでいるグルガオンでは韓国人がパン屋をオープンしました。味は日本とほぼ同じです。
 
・大都市のスパーマーケットではインドの食料および輸入食材が豊富に陳列されています。バンガロールやチェンナイにも日本食レストランがあり、また中華料理、イタリア料理などのレストランも多くあります。またマクドナルド、サブウエイなどファーストフード店も沢山出現しました。
 
・但し、これはデリー、ムンバイ、バンガロール、チェンナイ等の大都市のことであり、地方の工場で勤務されている日本人派遣者は食生活で苦労されておられます。