インドビジネスがよく分かる中島敬二のインドコラム

安定した労使関係の構築のための人事労務管理者の役割・対応

2013年1月

1. 安定した労使関係構築のためには、先ず必要なことーインド人特性の正しい理解
 
・以下インド人特性につき私見を述べたい。
 
(1)  公よりも私を優先する公私混同
 
・インド人の多くは公私混同を悪いこととは思っていない。むしろ当然なことと思っている。
 
(2)「自分は自分、他人は他人」という個人主義的考えが強い。
 
(3)会社の情報・知識は個人の財産と考える。
 
・情報・知識を他の人に与えれば得すると考える場合、または与えても損しない場合、そして与えても自分の立場が悪くならない場合、情報・知識を惜しみなく他の人に提供するが、そうでない場合には情報を会社内で共有するという意識は薄い。
 
(4)  インド人は寛容である、自己にも、他人にも
 
・例えば、携帯電話にて大声で話していても周りの人は文句を言わない。(これらが、インド人は礼儀知らず、図々しいとの印象を私たち日本人に与えている)。
(5)  朝令暮改をインド人は悪いとは考えない。
 
・さらに良い考えが出てきたら、素直に変えるのは極自然の人間の行為であり、正しいことを受け入れるのは変節ではないという。(インド流のフレキシビリティである。日本人はこの考え方についていけず、しばしば不愉快な思いをする)。
 
(6)簡単に約束して簡単に約束を破る。
 
・たとえ約束を守っても約束の期限を守ってくれない。(但し、約束を守るインド人もいる)
 
(7)  時間的ル-ズである。
 
・日本人にはそう見えるが、インド人自身は自分が時間にルーズと認識していない。逆に日本人は時間に几帳面過ぎるので窮屈だと考えているインド人もいる。
 
・(しかし、これも日頃の努力と教育で彼らを変えることは可能と思う。近年では素晴らしい日本的時間感覚をインド人も持つべきと考える人も増えている)。
 
(8)  インド人は相手をなかなか信用しない。
 
・すべてのインド人がそうであるということではないが、結構いる。相手を信用していないが、表面的には信用しているという態度をとることも多くある。(厳しいインドの歴史のなかで生き残りのための処世術)
 
・これがインドでは徹底的な契約社会と言われる所以の一つ。但し、いくら文書で契約書を作っておいても、約束を破る人は破る。彼らが、約束を絶対に守るのは自分の所属するコミュニティや血縁関係者の中だけである、と思ったほうが無難
 
(9)  インド人には嘘も方便という考え方がある。
 
・必ずしも悪意だけでなく、相手に不快な気持ちを与えたくない、という善意で嘘を言う場合もある。また、人を騙す、嘘をつくのは、生きていくためにはしょうがない、それほど悪いことではないと考えている人もいる。
 
(10)他の人への責任転嫁、責任回避がインド人社員の中に度々見られる。 
・別の見方をすれば、自分の責任外のことで人に積極的に協力しないという側面があり、これが日本式チームプレイ精神徹底化の一つのネックとなっている。
 
(11)権威にはきわめて弱い
 
・強いものにはあまり抵抗しない。長いものには巻かれるという側面がある。
・これらはカ-スト制度やイギリス統治が影響している。このためかトップ・上司に対する表面的盲従型の人も結構いる。
 
(12)インド人にとってはお金とプライドの両方が重要
 
・時と場合によってはお金よりプライドを大切にするインド人が沢山いる。要は、お金とプライドのバランス感覚で彼らは生きている。
 
(13)インド人は計算高さと妥協とのバランス感覚を持つ。
 
・自己の利益追求のために計り知れない執念深さを示すが、これ以上は無理だと分かると、態度を即座に変えて妥協するという思い切り良さも持っている。
 
(14)他人の損得に対する広い許容範囲が広い
 
・役職を悪用して個人的利益を得ている人をラッキ-と思い、できたら自分もそうなりたいと思っている人もおり、また他人は他人と言う考えも持っているので、これがインドではなかなか汚職とか賄賂がなくならない理由の一つ
 
(15)インド人は比較的空気に左右されやすい国民
 
・このことは、選挙やストライキなどに見られる。空気に影響されがちだが、同時に空気を読むのが大変うまいのもインド人
 
(16)インド人の大半は、仕事や会社より家族のほうがもっと大事にする。 
・これは、どこの国でもそうであるが、インドではこれがホンネとしてもろに前面に現れる。例えば、家族行事・儀式は何よりも最優先され、休暇取得は当然と考える。
 
(17)信仰心は極めて厚い
 
・神と生活面で共存していて、本気で神頼みのインド人も沢山いる。
・うまく言った時は神様のお陰。また、良ことが起きたら神様のお陰だ、とインド人は思っているそうである。
 
(18)インド社会は見栄と義理の社会である。
 
・たとえば、盛大な結婚式、特に娘の結婚式は莫大なお金を使う。ある面では自慢、見栄の世界であり、また、義理の世界でもあり、また自分のための関係作りの世界

2.人事・労務関係でうまくいっている日系企業の特徴

(1) 優秀な信頼できる知識・経験豊富な人事・労務担当のインド人責任者の存在

・このインド人責任者は日本的企業文化を理解し、日本人の思考パターンを良く理解している。

(2) 日本人トップとインド人人事・労務責任者との友好かつ信頼関係が確立している。

(3) 人事・労務関連のやり方・方針を本社が理解し、現地出向者を信頼して任せている会社

   同時に日本人トップが本社に対し説得力・影響力のある人材でいること

(4) 会社幹部が力ではなく能力・仁徳・人間関係でインド人従業員に対応している会社

(5) 主要従業員との関係が良好な会社。特に組合との良好な相互信頼感のある関係

(6)  透明度の高くインド人従業員からの提案・要望に耳を傾けている会社

(7) 仕事をインド人従業員任せとせず、日本人出向者が率先して業務に関与している会社

 

・仕事の仕方を日本人が率先して見せる。(管理者兼リーダー意識―プレイングマネージャー)

(8)インド人従業員の育成・教育に熱心な会社

(9) 従業員を家族ぐるみでチェア・-アップしている会社

(10) 厳しさと優しさのバランスが取れた従業員管理ができている会社

(11) 会社の方針等をインド人従業員に理解してもらえるよう不断の努力をしている会社

(12) 任せられるところは任せるが、締めるところは締める。権限移譲はしているが、

インド人従業員をコントロールできている会社

 
3.私がアドバイスしているインド人従業員への対処法・態度
(1)  インド人を最初から固定観念で見ない。
・インドは多様性の国でありインド人も多様性を持つ。従って、「インド人とはこうである」と最初から決めつけないこと
(2) 基本は「重箱のゴマをすりこぎ棒で」―インドでは完璧主義が通じない。
・すりこぎ鉢のゴマをすりこぎ棒でこなしたらよくこなれる。だが、重箱の中のゴマをすりこぎ棒でこなしても4隅にこなれないゴマが残るのは、しょうがないという考え。ここでは、完璧でなくても80%ぐらいで我慢しようということである。
(3) 4つのAの対応。「焦らず、あわてず、諦めないで、当てにしない」
 
・これはインドで過度にストレスが溜まらないための人生訓と言えます。さらにもう一つのAとして「インド人を侮らず」
(4) 相手の名前をできるだけ呼ぶ。
・日本人経営者・幹部に名前を覚えられたことだけでもインド社員は喜ぶ。
・末端の社員にも時々温かい言葉を投げかける。
 
(5) プライドをできるだけ傷つけない
・注意・叱責は他の人がいない時に…。ただし、効果があれば、人前でも時にはやることも効果的。また、大声で怒鳴るのでなく冷静に対応する。
 
・インド社員に何か苦言を呈したいときには、まず相手の良いところをほめて、事情は良くわかるけれどね…と言えば、絶反応は少なくなり、こちらの話を素直に聞いてくれるようになる場合もある。
 
(6) 間違いは許す。
・だが、その間違いの原因を徹底的に解明理解させることは大事
・ソーリーと言ったら、許してやればいい。だが、その時は同じ間違いをしたら、今度は厳しい態度を取ることを徹底させる。
 
(7) 「イエス…バット」方式も有効-直ちに否定しない。
・とりあえずまず相手の言い分は言い分として認めてから、それを踏まえてこちらの主張を言う、ということを私はよくやっている。あるいは、
「I understand , but my view is different from you」の言い方も良いと思う。
 
・おかしいと思ったことでも、重要でないことなら否定・反論をせず、黙って聞いておくようにする。否定すると、情報が入りにくくなることもあるためである。
(8) インド人の前では、日本人同士の日本語会話は必要最小限に
・インド人感覚は私たちが想像している以上に鋭い。日本語が分からなくても態度・言葉のトーンで理解されてしまうこともあるので、この点ご注意を…。
 
(9) インド人と約束したことは絶対に守る。できない約束はしない。
・インド人は約束を守らないので、こちらも守らないという態度は厳禁である。約束を守れないインド人は約束を守る人には敬意を払う。
・「イエス」という返事は慎重に(気軽に言ったことも彼らはよく覚えている)
 
(10) 従業員のちょっとした不満の言葉には注意を払う。そしてその不満の原因を分析することも大切
(11) その場限りのお世辞や過剰な評価は慎む。だが、よい仕事をしたときは褒める。
(12) インド人の「ノープロブレム」は「問題があり」と理解しておいた方が無難
 
・「本当に問題がない」というよりも「問題の所在を確認できない」ケースが多い。
(13) インド人は好き嫌い感情に敏感であることを念頭に置いた対応をする。
・こちらが好意を持っていることを口や態度をできるだけ示し、良い関係を作る。
 
(14) 社員の家族行事(宗教的行事を含む)には格別の理解を
・仕事のために家庭を犠牲にするという考え方はインド人には一般的にはない。
・インド人が家族行事のために休日を求めてきたら快くOKする。但し、次回からは事前に申し出るよう釘を指す。
・インド人の宗教的行事・儀式をバカにしたり、批判したりすることは絶対禁物
 
(15) インド人従業員に手を出すことは厳禁と考える。
・体を触っても相手が悪感情を持っている場合、暴力行為とみなされてしまうこともあり得る。
 
(16) 伝達・依頼・命令・指示は明確に。重要なことは文書で行う。
 
(17) 日本的な浪花節は通じないと考える。だが、一旦信頼関係を構築した暁には通じる。
 
(18) 時には演技として弱さを見せる。
・自分はその意見には理解できるが、本社が了解しないので…言うと理解してくれ場合もあり。彼らも権威には弱い。
 
(19) 従業員のデータはできるだけ正確にそして多く持つ(家族構成、誕生日等)。
・インド人は家族のことを良く話す。インド従業員の誕生日を記録しておいて誕生日に小さなプレゼントを渡すと大変喜び、これはやる気をさらにもたらす。
・奥さんや家族と接する機会があるときには彼らの前では本人を褒めあげる。但し、言質を取られないようなやり方でやる必要がある。
 
(20) アイコンタクトの活用 (私の場合)
・インド人部下との関係強化の一つの方法として、私は、他の人には気づかないその人だけとのアイコンタクトを使いました。他の人に分かってしまうと、マイナスになるので、TPOに注意する必要がある。
 
(21) 基本は「優しさ」と「厳しさ」で接する。
 
(22) 「インドは特殊」「インド人は特殊」という考えは持たない。
・基本はインド人も日本人も同じ
・この考えを持つと、「特殊だから、インドの仕事は難しい」「特殊だからしょうがない」「特殊だからインド人にすべて任せよう、任せざるを得ない」という発想になってしまう。
 
(23) インド人の会社忠誠心があるという言葉は信用しない。
・会社への忠誠心をよく口に出す社員もいるが、“私は貴方に忠誠を誓います”と簡単に言う人は誰にも同じことを言っていると思い、そのようなインド人は信用しない。
・言葉より態度・結果を見て判断
 
(24) インド人相手にカーストの話はしない。
・これはインド人の個人の問題
・高カーストの従業員に対しては、他に誰もいなければ、「あなたのカーストはブラマンですね」と言うと大変喜ぶが、原則従業員のカーストについては触れないのが無難
 
(25) できないこと、受け入れないことははっきり「ノ-」と言う。
・「ノ-とはっきり言える日本人は最終的には尊敬される。
 
(26) 会社ル-ルを守らせることについては妥協はぜず徹底的に
・これは厳しく対応することが必要。会社ル-ルを従業員に徹底的に説明し理解させ、その上で妥協せず、徹底的に対応することが極めて大切
 
4.インドで労務問題を起こさぬ11の鉄則


(1) 暴力は振るわない。振るう振りをしてもならない。体にちょっと触っても暴力行為と歪曲される   ケースもある。
(2) プライドを傷つけない。インド人の労働者の多くは日本人が思っている以上にプライドが高い。
(3) インドの労務関連の法律を正しく理解し法律を遵守する。

(4) 就業規則は詳細且つ具体的に分かり易く作成し、規則に関する解釈が労使間で異ならないよう務める。就業規則作成には労務関連法律家等の協力を得る。

(5) 文書主義に徹する。重要な事項は口頭では行わない。必ず合意事項を文書化し組合の

署名を取得して置く。インドは文書証拠主義の国である。

(6) 公平な人事評価(昇進。昇給)に努める。できることなら、評価制度を従業員に公開し

評価制度の目的・内容を周知させる。

(7) 特定個人の例外待遇はしないこと。特定個人を甘やかしてはならない。

(8) 担当業務を明確にしておくこと。業務変更は必ず本人の同意・確認を取るべし。強制は不可。又、他の職員との(カースト)関係も配慮しておくことも必要。

(9) 従業員の権限を明確にし、報告・申請ルートは厳格に守らせる。

(10)宗教・慣習・冠婚葬祭に関しては寛容の心で対処する。

(11)インド就業規則に準じた日本人(本社派遣駐在員)に対する特別規定を設定しておくこと。

特別規定でも合理的規則があれば問題ない。

5.インドの労働法制の特徴

(1)  一般にインドの労働法制は労働者(ワークマン)を厚く保護している。

 
*ワークマンの定義

・「手作業的、非熟練的もしくは熟練的、技術的、作業的、事務的または監督的業務のために雇用された者

・経営的または管理者的立場にある者、または月の賃金が10,000 ルピーを超えており、かつ監督的立場にある者などを除いた者

・たとえば、100名以上の産業施設についての制定が義務付けられている就業規則の適用対象となるのはWorkmanのみであり、会社とNon-Workmanとの間の就業関係の規律は、両者間の契約内容によることになる。
 
・最も重要な法律である労使紛争法は、いずれかの産業において雇用されている労働者(ワークマン)のみに適用される。
・労働組合の加入資格が「被雇用者」とされているため、「ノン・ワークマン」も加入資格を有するが実際は「ワークマン」のみ加入しいている。

(2)  中央政府と州政府の両方の労働法があるが、州政府は法律の制定・修正が変更できるので州によって労働条件が異なる。

(3)  インドの労働関連諸法が極めて多い。

(4)インドの主要労働法は制定がかなり古いものが多い。(条項の追加・削除・変更が多い)。

(5)  労働法制の定める労働者保護の恩恵を受けるのは就業人口の1割に上るかどうか、インドのごく一部の労働者である。

・小規模組織・未組織部門には適用されない労働法が多い。

・インドでは一般にホワイトカラーの一部と管理職には労働法が適用されない。

6.労使関連法律

(1) 労働組合~労働組合法:(The Trade Unions Act, 1926, 2002年改正)
・労働組合とは、労働者・雇用者間、労働者同士、雇用者同士の関係を規定する目的で一時的または恒久的に形成された団体であると規定されている。
・労働組合に団体交渉を行う法的な力を与える目的で登記することを規定している。本法では登録された労働組合に一定の保護と権利を供与している。
・登録された組合の専従組合員は総専従組合員の3分の1、もしくは5名のいずれか少数を除き企業に実際に雇用されている者でなければならない。
 
(2)  労働争議解決システムに関する法令~労働紛争法:(The Industrial Disputes Act, 1947)
・労働組合が、使用者側と対等な立場から、雇用・労働条件に関する団体交渉を保障
・労働組合としての登録は、任意登録制を採用する。政府機関に手続を経て登録された労組に対しては、一定条件の保護と特権の付保を認める。
・さらに、登録した労働組合については、動産・不動産の取得・管理権や契約締結権が認められている。同時に登録済み組合は、当該年の財政収支と資産・負債の状況などについて、政府への報告義務が定められている。
・2002年の改正同法では、個別企業の全従業員の10%以上、または100人以上が加入する労組だけの登録を認める。
・争議法との名称であるが、争議解決のための団体交渉の重要性が強調されており、さらに団体交渉が失敗した場合には、労使双方が、労働審判所、労使審判所、全国争議審判所において調停、仲裁、裁定の請求を認める。
・また本法には労働者のレイオフ(一時待機)やリストラについての規定も設けてある。 

7. 組合

(1) 適用法律: 1926年労働組合法(1926)

 
(2)  インド労働組合の特徴
(a)   登録労働組合の数が極めて大きい(約7700の組合)
(b)   約70%の組合が中央労働組合組織に所属
・50万人以上の組合員で最低4州4産業にまたがって組織されている組合
(c)    中央労働組合の多くは政党と結びついている。
(d)   外部指導者の存在
(e)   同一産業・組合の中に複数の組合が存在
(f)    労働組合結成には登録不要。しかしながら、法的権利を受けるためには登録が必要
(g)   従業員の権利意識が極めて強い-エゴの強さ
(h)   賃金水準へのこだわり
(i)    組合間具のエリート化
 
(3)  労働組合の登録要件
・当該産業または施設に従事するワークマンの10%ないし100人のいずれか少ない方(但し、7人以上)が組合員であること
 
8.ベストは従業員に組合を結成させないこと
(a)  インドの一流大手会社にも組合を持たない会社が多数あり。
・日系企業のうちアンケートに回答した195社中組合が存在しているのは21社のみ。(JCCII報告書)
(b)  この為の対応策
・他社に遜色のない労働条件(賃金・福利厚生)の設定と改善
・人事担当責任者に優秀なインド人を採用
・労働者の中核になる人間を親会社派の育てる、
・労働者の小さな不満を看過せず対応策を適宜実施する、労働者の出身地を分散される(地元出身者で固めると組合が結成され易い)等
 
9.労働者間で組合結成の動きが出始めたら、原則この動きを抑えない。
労働組合の結成は法律で認められた労働者の権利であり、これを止めることは原則不可
・むしろ、好意的に受け止めて組合結成を歓迎する態度をとったほうが良い。また、会社は労働協約を締結する義務はないが、労働紛争に備えて速やかに締結する。
・政党と結びついている上部組合団体との提携をしないよう交渉する。
 
10.組合が結成されたら…
(1)  組合(実質的には組合幹部)を尊重し、組合との良好関係の構築に努力する。

(2)  労働組合法に関する正しい知識を持つ。例えば、不当行為とは何か明確に理解しておくこと

(a) 使用者の不当行為

・労働者の組合結成、加入、活動を制限すること

・財政援助によって組合を支配、介入すること

・御用組合を結成すること

・組合員への差別的取り扱いによって組合活動を抑制すること

・組合活動等を理由に解雇や懲戒処分に付すこと

・スト破りのために請負業者に仕事をまかすこと

・不当な配置転換をおこなうこと

・仕事復帰の条件として合法なストに参加した組合員に善行誓約書に署名を求めること

・特定の労働者をえこひいきすること

・正規労働者の仕事を奪うために臨時労働者を雇用すること

・労働争議調整中に使用者に不利な申告をしたことを理由に、懲戒処分や差別的取扱をおこなうこと

・合法なスト中に労働者を募集すること

・裁定や協定を順守しないこと

・暴力や暴行をおこなうこと

・誠実に団交に応じないこと

・違法なロックアウトを実施しないこと

(b) 労働者・労働組合の不当行為

・違法なストを実施したり、そそのかしたりしないこと

・組合加入や脱退を強制しないこと

・使用者との誠実な団交を拒否すること

・団交代表の承認に反対して争議行為をおこなうこと

・怠業やゲラオ(職場占拠)をおこなわないこと

・使用者や管理職の住宅のまわりでデモをおこなわないこと

・使用者の財産に損害を与えないこと

・労働者の出勤を妨害する意図で、労働者に暴力や暴行を与えること

 
(3)  第二組合の結成は極力避ける。(労働者間の不和が顕著化する)

(4)  インドの他企業の労働争議に関する情報収集を怠らないこと

 

11.ストライキ・サボタージ発生防止の努力

(1)  会社情報でできるだけ従業員と共有化する継続的努力

(2)  会社の方針・運営を理解してくれる従業員を育成(組合員・非組合員を問わず)

(3)  労働者と彼らの直接上司(スーパーバイザー等)との人間関係に注意・関心を持つこと

(4)  上記 「人事・労務関係でうまくいっている日系企業の特徴」、「インドで労務問題を起こさぬ11の鉄則」等を念頭にして対応

(5)  「従業員の不満があるのか、その内容は何か」等を早い時点で把握するよう努力

 

12.ストライキが起きてしまったら…

(1)   先ずストライキ発生の原因を徹底的に分析する。(待遇面、人間関係面)

(2)   非組合員(管理職)への早期解決への協力要請

(3)   場合によっては、労務コンサルタントを起用し、対策チームのメンバーに入ってもらう。

(4)   組合との交渉は冷静に友好的態度で臨む

(5)   完全勝利はありえないと考え、どこまで会社として譲歩できるかおよびその会社への影響を

分析し、早めに妥協案を作成し、交渉戦略・戦術を検討する。組合からの要求を受けることが

困難であるという理由を明確にし、理論武装を行う。

(6)   妥協案はインド人幹部には、最後の最後まで言わないようにする。(組合に情報を漏らす

インド人幹部も存在するかもしれないので…)。妥協案は同業他社・同地域の会社の

労働条件を加味する。

(7)   最初は組合要求を拒絶したり、即反応したりせず、先ず先方の言い分を聞くことに終始する。

(8)   会社が受けられる条件(あるいはダメージの少ない条件)をこまめに出しながら、会社が

絶対受け入れない要求は断固として拒絶続ける。(組合は駄目元で要求を出してくる場合も

多い)。

(9)   時には、組合要求は理解でき、できたら受けてやりたいと理解を示しながら、それでは会社の業績も落ち込み経営が難しくなることをアピールし全社的態度(愛社的態度)で対応して

欲しいとお願いすることも有効である。

 

13.インド人の人事・労務責任者

 
(1)  優良な日系企業には必ずと言ってもよいほど、優秀な人事担当役員や人事部長がいる。逆の言い方をすれば、優秀な人事責任者がいるからこそ、会社も優良となると言える。

(2)  人事担当責任者を採用面接の際は、インド人は一般的に自己PRが巧みであるので、

適正人材と思っても初対面で直には決めず、2~3回の面接を通じて適正人材であるかの

確認作業を続ける.

(3)  私の考える人事担当責任者の資格条件
(a)  人事・労務に関して、法律知識も含む十分な知識を持った人であること。
(b)  性格が良い人(誠実・嘘を言わない)、人間包容力のある人(清濁合わせ飲める人)
秘密を守れる人、日本的考え方を理解できる人、絶対的条件ではないが、できたら
カ-ストの高い人が望ましい。
(c)  人事・労務業務の経験のある人。人事・労務業務に最低10年間担当し、5年間は
その責任者としての経験を持っている。[これが、インドの大手企業は採用基準]
 

14. ストライキの事例

(1)  スズキ・マルチのストライキ(詳細は配布資料をご参照ください)

(2)  私が解決のため支援した某日系自動車部品会社のストライキ